なんてことない、ありふれた2ヘッドデッキです。
先日H/Oで見つけて、一度見送ったのですがある方のオススメ(?)もあり買ってみました。お値段は千円。
システムコンポ「ALL DAYS COMPO」の構成品だったみたいです。
デザインは何というか同年代、そして国産品とは思えない、まるで欧州の製品のような雰囲気をしています。
以前、同デザインのチューナーF-570を使っていたことがありましたがこちらは大した性能ではなかったです。
ボンネットを開けて内部を見てみます。
ちなみに、カバーの止めビスは底面にあります。
そのため左右にはビスが見えません。これもデザイナーのコダワリでしょうか。
まるでApple製品みたいですね・・・。
基板には各ブロックの記載があり、さらには調整箇所もご丁寧にシルク印字されています。
信号の流れを目で追って、カセットデッキの仕組み理解する教材としても最適かもしれないですね(笑)
あと調整箇所がすぐわかるのは修理時に非常に助かります。
さて、このデッキの故障症状ですが、テープを入れてもキャプスタンが回っていないのは店頭で確認しており、
思った通りベルトの溶断でした。
さらに、リールの駆動トルクも弱いのでアイドラーも劣化しているようです。
ビス計4本を外しメカデッキ部分を取り外します。
フロントパネルの内側に2本隠れています。
ケーブルはコネクターで接続されているので取り外しは楽な方です。
ベルト交換を行うためフライホイールにアクセスします。
順序:
0、キャプスタン軸に嵌めてあるワッシャ(オイルシール)をあらかじめ外しておく。
1、基板を外しキャプスタンモーターを時計周りにひねって外す。(ゴムブッシュを大穴の方にずらして抜く)
2、ポテンショメータ(ボリューム)を外す。(フライホイール固定板に干渉するので)
3、固定板の取付ビスを外してフライホイールを垂直に抜き取る。軸受に板ばねとワッシャが挟んであるので注意。
フライホイールにはベルトが溶解して妖怪ベトベトンと化しています(^^;
コイツの始末は何度やっても苦痛以外の何物でもないですねぇ~。
こうやって張り付いているのはまだ良いのです。
やっかいなのは、残っていた切れっぱしが床に落ちて、知らない内に踏みつけてしまうことです(爆)
家中に汚れが広がってしまいます。(私も経験あり)
必ず新聞紙等を広げて、汚れても良い服装で作業しましょう。
プラスチック製のヘラでこそぎ落として、アルコール等できれいに除去します。
モーター側のプーリーも同様に除去します。
このフライホイールは重量250gありズシリと重いです。
新しいベルトを装着して逆の手順で組み立てます。
ベルトサイズはφ65mmが適合します。
お次はアイドラーを復活させます。
Eリングで止まっていますのでふっ飛ばさないように注意です。
表面は硬化してカチカチになっています。さらには長期間モーターに押しつけられていたため跡が付いています。
表面の硬化した層をやすりで削り落してグリップを回復させます。
本来は交換ですが、補修部品の入手は当然ながら出来ませんし、代替パーツも手持ちにありません。
その場しのぎ的な方法であまり良い修理方法ではありませんが、やむを得ません。
研磨後ですが、ゴムの劣化が思ったより進んでいて亀裂も入っています。
近いうちに交換が必要ですね。。
アイドラのサイズは、外径17x内径12x厚み3mm(多少誤差あるかも)でした。
今回は結構削ったため外径が16.7mmと小さくなってしまいました。。
以上で一応メカのメンテ(と言えるか別ですが?)は終了です。
最後に走行系の清掃を行います。
ヘッドはきれいで摩耗もそれほどしていません。
ヘッドにシールが貼られてないのはちょっと残念?補修用の部品にでも交換されているのかな?
以上の作業を行い動作を取り戻しました。一通り動作しております。
インチキ処置をしたアイドラーもスリップせず、今のところトルクも十分です。
ただし長続きはしないと思いますが・・・。
FF時
REW時
テープスピードも少し遅く感じたので調整しました。
ヘッドアジマスの確認をします。
最後に外装を、特にボタン類のプラメッキが錆でひどい有様です。
これはちょっと触るのも憚られますね。
この年代のパイオニア製はプラメッキが多用され、避けられない問題みたいです。
私はプラメッキの錆除去にはクレンザーを使用しています。
台所にあるカネヨとかの普通のクレンザーです。
コンパウンドで磨くと粒子が細かいため、不自然にツヤが出てあまり良い仕上がりになりません。
まるで使い込こまれてテカリが出たような感じになります。
クレンザーだとそのような事はなく、ザラザラした錆だけを落としてくれます。
クレンザーで洗った後ですが、錆の根が深いためか思ったよりきれいになりませんでした。
ん~、これは仕方ないですかね。。
早速使ってみました。
音質も2ヘッドだし、正直全く期待していなかったのですが、これが中々良い音でビックリです。
安物デッキにありがちなこもった感じは皆無です。
良い録音のテープを掛ければ下手な3ヘッド機より再生音は上ですよ。
いやホント恐れ入りました。。2ヘッドだからって馬鹿に出来ませんね!
だからカセットデッキは奥が深いのかもしれません。
テープ残量窓のエメラルドグリーンのライトがとても綺麗です。
シャンパンゴールドのフェイスと相まって実に優雅なデザインです。
機能もたくさんボタンもたくさんの機種に惹かれますが、こういったシンプルな製品も魅力がありますね。
買って良かったです(^^;
カセットデッキの魅力を再発見できたデッキでした。